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都市再開発

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1. 都市再開発法における意味

都市再開発法の規定する都市再開発とは、市街地の土地の合理的・健全な高度利用と都市機能の更新を図るために行われる、建築物及び建築敷地整備、公共施設の整備及びその附帯事業のことである(都市再開発法第2条)(以下、都市再開発法を「再」という)。
(注)再§2の2による事業を法定再開発というが、都市再開発には、他に、

  • ・他の特別法によるもの
  • ・制度要綱等にもとづく手法(住宅市街地総合整備事業等)
  • ・都市計画法や建築基準法に基づく規制誘導(地区計画)

よるものもある。以下は、法定再開発について述べる。なお、まちづくり手法でもある市街地再開発事業においても、前途の開発型証券化手法が導入されている事例があり、資金調達の主体として証券化ビ-クルを活用したり、参加組合員や保留床処分先として証券化ビ-クルの活用事例がみられる。
以下は、この都市再開発法の規定する再開発について述べる。

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2. 種類

以下の2種類がある。

  1. 1. 第一種市街地再開発事業(権利変換方式)(再§3.4.7の2)
    従前(再開発事業の行われる前の状態をいう。以下、同じ)の土地・建物等の権利者は、従後(開発の完成した状態をいう。以下、同じ)の施設建築物(再開発ビル)の床(権利床)を取得し(権利変換)、権利変換を希望しない者は権利に相当する対価補償金を取得する。保留床を売却して事業費に調達する方式である。
    この方式では権利変換手続きによる権利の一括処理が行われる。
  2. 2. 第二種市街地再開発事業(用地買収方式)(再§3の2.4)
  3. 再開発区域内の従前土地建物を事業者がいったん買取り、事業後に従後の施設建築物(再開発ビル)を、入居希望者に再配分する。
    保留床を売却して事業費に調達する点は第一種市街地再開発事業と同じである。管理処分手続きは、土地収用法による収用権を背景とした用地買収方式による個別処理である(実際の用地取得は任意買収で行われ、収用手続きの実行は例外である)。
    第二種市街地再開発事業は公共性、緊急性の高い事業についてみとめられ、かつ、個人、組合では施行できない。再開発株式会社、地方公共団体、都市再生機構等により施行される。

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3. 施工者

以下のような施行者と事業のタイプが規定されている。

  1. 1. 個人施行(再§7の9以下)・・・・第一種市街地再開発事業
    1人又は数人共同で実施する。
  2. 2. 市街地再開発組合施行(再§8以下)・・・・第一種市街地再開発事業
  3. 3. 再開発会社(再§50の2以下)施行・・・・・・・第一種及び第二種市街地再開発事業
    • ・再開発会社による施行は平成14年の法改正によって認められた。
    • ・この会社は地権者の参画(議決権の過半の出資等)を得て設立される株式会社である。
    • ・この会社による施行の認可申請には地権者の2/3以上の同意が必要である。
    • ・この会社では第二種市街地再開発事業も施行できる。
  4. 4. 地方公共団体(再§51以下)施行・・・・・・・・第一種及び第二種市街地再開発事業
  5. 5. 独立行政法人都市再生機構等(再§58以下)施行・・・第一種及び第二種市街地再開発事業

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4. 要件

都市開発法では以下の要件が必要である。

  • ・高度利用地区、都市再生特別地区又は特定地区計画等区域内であること。
  • ・区域内にある耐火建築物の割合が1/3以下であること。
  • ・区域内の土地が細分化などで、土地の利用状況が不健全であること。
  • ・土地の高度利用を図ることが都市機能の更新に貢献すること。

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5. 都市再開発事業の流れ

下表のような流れとなる。

地元住民等とのまちづくり案の検討

以下では、主として第一種市街地再開発事業の組合施行のものについてのべる。

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6. 標準的な組合・個人施行の都市再開発事業の流れ

再開発基本構想・都市再開発方針

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7. 組合施行における事業参画者

1. 事業参画者が必要となる理由はつぎのようなものである。
  • ・権利者は不動産事業に関しての知識が薄い。
  • ・事業進捗のスム-ス化、資金調達の安定化のために参画者が必要である。
2. 事業参画者の種類は以下のような者である。
1. 参加組合員制度

保留床取得者として組合設立当初から参画する。

2. 特定建築者制度

特定建築者は保留床の全部又は一部を取得し、施設建築物の建築を組合に代わって行う。
特定建築者は、UR、公社等公募で決める。

3. 業務代行方式

施行者からの委託にもとづき、業務の相当部分を民間事業者が代行するものである。

3. 参画方式

事業推進体制という視点でみると、つぎのようなタイプにわけられる。

  1. 1. 組合が、ゼネコン・不動産会社等と業務代行契約等を結んで事業の推進を図る方式。
  2. 2. 民間事業者が権利者として参画して(特定建築者の子会社が、地区内の権利を先行取得する)、組合と協同で事業を推進する方式。
  3. 3. 権利者を中心に事業協力者(行政、ゼネコン・金融機関、公社等)からの出資を得て株式会社(開発法人)を作る方式。

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8. 組合施行における資金計画

1. 内容一覧

まず事業費を算定し、これに見合う資金調達を検討し、下表のような計画を作成する。

収入項目 支出項目
  1. 1.補助金
  2. 2.管理者負担金
  3. 3.保留床処分金
  4. 4.借入金
1.調査設計計画費
  • ・事業計画作成
  • ・地盤調査
  • ・建築設計
  • ・権利変換計画
    (確定測量・調査、従前・従後資産評価、権利調整、権利変換計画書作成)
2.工事費
  • ・建物等除却費
  • ・公共施設建設費
  • ・施設建築物工事費
3.補償費
  • ・用地補償
  • ・建物補償
  • ・借家人補償
  • ・営業補償
  • ・工作物補償
  • ・その他通損補償
4.その他経費
  • ・営繕費
  • ・借入金利子
  • ・事務費
2. 作成時期

この資金計画はつぎのような各段階で作成される。
第1段階・・・事業の初動期から準備組合設立までの間
第2段階・・・準備組合設立から組合設立までの間
第3段階・・・組合設立から権利変換決定までの間

3. 問題点
1. 基本的な視点はつぎのとおりである。
  • ・投資ビジネスとして採算がとれるか。これがベ-スである。
  • ・関係者の目的達成・・・・・・権利変換での関係者の納得が得られるか。
  • ・資金面・・・・・・・・・・・・・・・・保留床処分の可否(価格は交渉で決まる)はどうか。
    再開発事業の成否は、権利者の権利変換計画に対する満足度と保留床処分の実現性の両面で決まる。また、再開発ビルの床価格は「権利者の従前資産価格+事業費-補助金収入等」で決まる。
2. 具体的にはつぎのような問題がでてくる。
  1. ア、権利者の満足を得るために従前資産価格を高く評価すると保留床価格が高くなり、保留床処分が難しくなる。
  2. イ、逆に、保留床処分価格を低くするために従前資産価格を低く評価すると、権利者の同意が得にくくなる。
  3. したがって、資金計画は事業内容を反映させるもので、この両者のバランス確保が重要である。

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9. 組合施行における権利変換

1. 意味

権利変換は、従前資産額を従後の資産(再開発ビル)に移し替える、という等価交換が原則である(等価等積交換の主張がでる場合もある)。
また、権利変換計画作業は、事業の各段階で検討され、事業全体にフィ-ドバックされ、変化し、最終的に確定される。

2. 権利変換の3つのタイプはつぎのとおりである。
1. 原則型

施設建築敷地は合筆されて1筆となり、その上に施設建築物の所有を目的とする地上権が設定され、施設建築物は区分所有とされるタイプである。

2. 地上権非設定型(§111特則)

施設建築敷地は合筆されて1筆となり、施設建築物とともに共有となるタイプである。

3. 全員同意型(§110特則)

権利者全員(土地所有者、借地人、借家人、担保権者)の同意があれば、施設建築物敷地や施設建築物の権利形態を自由に決定できるタイプである。

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10. 組合施行における評価対象資産

以下のとおり、2種類の資産が評価対象となる。

1. 従前資産評価
1. 権利変換の対象となる資産

権利者の有する土地所有権、建物所有権、借地権等がある。

2. 権利変換の対象とならないが、

権利変換計画で取り扱われる権利借家権、その他がある。

2. 従後資産評価

これは、評価基準日においては未だ完成していない再開発後の施設建築物及びその敷地を評価することである。

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11. 組合施行における資産の評価方法

1. 従前資産(法§80)について
1. 評価対象と評価方法
  1. (ア)土地
    • ・従前資産の土地は更地として評価する。
    • ・評価方法は、一度に多数の画地を評価しなければならないので、標準地比準評価法又は路線価式評価法が採用される(通常は後者を採用する)。
    • ・将来の事業の完成による土地価格の上昇という開発利益を、従前土地価格に反映すべか否かについては、肯定説と否定説がある。
  2. (イ)建物
    • 従前資産としての建物評価は次のようになる。
    • a. 権利変換者所有建物価額・・・・現在価値額=推定再建設費×現価率
      現価率は次式の定額法により算出する。
      定額法=(推定再建築費-残存価額)×(1-(経過年数÷耐用年数))
      なお、損失補償基準上では、建物の木造・非木造別に、現価率が規定されている。
    • b. 地区外転出者所有建物価額・・・損失補償で用いられる再築工法により算定する。
      再築工法=建物の現在価額+運用益損失額+取壊し工事費-発生材価額=推定再建設費×再築補償率
      (注)再築工法とは、損失補償基準上用いられる算定方法である。
    • c. このように、権利変換者の所有建物と、地区外転出者の所有建物とでは、建物評価方法が異なる。それは、後者については、建物移転という損失補償原理の機能が要求されるからである。
  3. (ウ)借地権、借家権
    借地権の評価は割合方式(借地権価格は土地の更地価格の何割になるか、という割合で評価するもの)が一般である。
  4. (エ)再開発地区内に存する建物に居住している借家人の行動パタ-ンはつぎのようになる。
    • ・地区内に残留する場合→家主が取得する新たな床を賃借するか、又は施行者取得の床を賃借するか、あるいは保留床の優先分譲取得を受けて施設建築物に残るか、という3パタ-ンとなる。
    • ・地区外に転出する場合→金銭給付を受けて、再開発地区外に転出するパタ-ン。転出者には再開発法第91条または97条による補償が支給される。
2. 評価基準日

事業認可公告日から起算して31日目である。

2. 従後資産(再§80.81)について
1. 評価対象

再開発事業によって作られた完成後の不動産(再開発ビル)が評価対象である。すなわち、つぎのものである。

  • 施設建築敷き地・その共有持ち分・施設建築物・地上権の共有持分
  • なお、施行者賃貸の床の家賃、地代も決定する。
    施設建築物の床の種類にはつぎのものがある。
    権利床・・・権利者が取得する床
    保留床・・・第3者に売却する床
2. 評価時点

基準日時点(事業認可公告日から起算して31日目)である。評価時点においては建物は存在しないので、基本設計図等にもとづいて、評価時点に完成しているものとして評価する。

3. 評価方法

再開発法の条文を読んでも解りにくいが、法は以下のように従後資産の評価方法を規定している。

  1. ア、基本式
    • 原価と時価の間で定める(再§81、施行令§41)
    • 原価≦ 従後資産≧見込価額(時価)
    • ・原価とは、施設建築敷地と施設建築物整備に要する費用の内、従後資産に要する費用の額、すなわち、事業原価のことである。
    • ・時価とは、近傍類似の土地・建築物の価額を参酌して定めた従後資産の見込額のことである。
  2. イ、原価=事業原価=の内訳はつぎのとおりである。
    1. (ア)項目はつぎのとおりである。
      • a 権利変換対象従前資産額
      • b 調査設計計画費
      • c 土地整備費
      • d 補償費(§91補償費+§97補償費)
      • e 工事費
      • f 事務費
      • g 借入金利子
        a~gまでの合計額=従後の建物及びその敷地の原価。
    2. (イ)これら項目の合計額を施設建築敷地価額と施設建築物価額とに配分する。
  3. ウ、具体的には、評価方法は以下のような順序となる。
    1. (ア)まず、つぎの3手法により「1棟全体」の建物とその敷地価格を算定する。
      • a、原価法・・・・・・・・・・建物価格+土地価格
      • b、取引事例比較法
      • c、収益還元法・・・・・・永久還元法、DCF法
        なお、全員同意型の場合は自由に評価してよい。
    2. (イ)つぎに、用途別・位置別・階層別効用比(又は地価配分率)により、用途別、位置別、階層別毎の、「各床価格(区分所有建物及びその敷地の価格)」を算定する。
      ・各床価格=1棟全体の価格×用途別効用比率×階層別効用比率×位置別効用比率
    3. (ウ)用途別、階層別、位置別効用比について
      これは、施設建築物(区分所有建物)の鑑定評価をする場合に、経済価値は用途と階層と位置により異なるとし、かつ、専有部分、共用部分、敷地利用権が不可分一体的な性格をもつとして、次式のような算式で評価を行うものである。

    4. 階層別効用比率

    5. 位置別効用比
  4. エ、以上を図解するとつぎのようになる。
  5. 原価法

  6. オ、権利床価格と保留床価格
    • ・保留床価格は原価を上回るとは必ずしもいえない。時価を下回る場合も生じる。
    • ・参加組合員の取得する床価格は第3者への販売を予定するので、その床価格が時価より低い場合には、原価を下回る場合も生じうる。
3. 保留床と権利床との関係
  • ・保留床床価格が高いと権利床床面積が増加する。
  • ・保留床床価格が安いと権利床床面積が減少する。
  • したがって、この保留床床価格をいかに高く設定して、かつ、迅速に処分できるかが重要となる。

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12. 不動産証券化の導入

ディベロッパ-のリスク回避を背景として、オフィスビル、商業施設、マンション、大型物流施設等などの再開発事業において、不動産証券化手法の導入がある。
すなわち、稼働物件が存在しない段階で、将来建設される建物を対象に証券化する。不動産開発に要する資金を金融機関、投資家等から調達し、開発後(建物完成後)の不動産(保留床)の売却代金や賃貸収益金によって、調達資金の償還や投資家への配当を行う。つまり、個々の事業(プロジェクト)が生み出す収益を原資とした資金調達である「プロジェクトファイナンス」による手法である。
この証券化成功のためには、つぎのようなことが望まれる。

  1. ア、建物の収益性・売却価格確保の点から、テナントリ―シング、PM(PropetyManagement:賃貸不動産の運営管理業務)がしやすい事業計画であること。
  2. イ、保留床価格は事業成立の観点から導出される価格ではなく、収益性・市場性から導出される価格であること。
  3. ウ、完成再開発ビルは、安定したキャッシュフロ-が見込まれる、収益性の高い物件であること。

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13. 再開発における損失補償

1. 権利者の行動パタ-ン

再開発地区内の権利者の行動パタ-ンは、つぎのように分類される。

1. 第一種市街地再開発事業の場合

・権利変換を受ける者(再開発ビルへの入居)と
・地区外に転出する者とに分かれる。

2. 第二種市街地再開発事業の場合

管理処分という用地買収により、関係権利者全員がいったん地区外に転出する。
その後は、再開発ビルに入居する者と入居しない者とに分かれる。

2. 補償の種類

権利者に支払われる補償の種類は次の通りである。

1. 再91条補償(対価補償金)
  • ・地区外転出者が対象である。
  • ・土地、建物に関する権利の対価補償金(建物自体については97条による移転補償金となる。「推定再建築費×現在価値率」とはならない)である。
    (注)なお、再開発ビル入居者は、時価による等価交換という形で、完成した従後の再開発ビルの資産(床)が与えられる。
  • ・価格判定は評価基準日(組合設立認可又は個人施行認可公告日から31日目)である。
2. 再97条補償(通損補償金)
  • ・土地の明け渡しに伴う通常生じる損失の補償である。
  • ・地区外転出者及び再開発ビル入居者が対象である。
第一種市街地再開発
権利変換者 転出者
建物 時価 移転
工作物等 移転 移転
動産 移転 移転
移転雑費 金銭 金銭
仮住居 金銭 金銭
家賃減収 金銭 金銭
借家人補償 金銭 金銭
営業補償 金銭 金銭
3. 損失補償の基準

施行者が、以上のような評価・補償についての基準や細則を策定し、それに基づいて評価・補償が行われる。

4. 借家人の扱い
1. 借家人の行動パタ-ンはつぎのとおりである。
  1. ア、家主が権利変換を受ける場合
    1. (ア) 新たな床を賃借し、移転する。
    2. (イ) あるいは地区外に転出する。
  2. イ、家主が権利変換を受けない場合
    1. (ア) 施行者取得の新たな床を優先して賃借し、移転する。
    2. (イ) あるいは地区外に転出する。
2. 借家人への損失補償
  • ・再§91の対価補償金・・・借家人に支払われる借家権価格相当部分は家主の従前資産額から控除される(控除主義)(公共用地買収の場合と異なる)。
  • ・再§97の通損補償金
5. 生活再建措置についての規定
  1. 1. 一種市街地再開発事業については、生活再建措置についての都市計画法第74条の規定(都市計画事業の施行に必要な土地等を提供した者についての生活再建についての規定)が適用されない。権利変換制度が生活再建の機能を有しているからである。しかし、法律上の規定はともかく、実務的には、一般的な生活再建策の確保が重要である。
  2. 2. 第二種市街地再開発事業については同条の適用がある。

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